~序章~

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「すみません、遅くなりました」 上司が軽く睨んでくる 並んでる最中に少し遅れると連絡したはずなんだが… 「おい、早く座ってチラシ作れ。ただでさえ人手が足りない状況なんだから」 と、言われて慌てて自分のデスクに戻る パソコンが故障中の為に、今は手作業でチラシを半分に折っているのだ 俺の仕事先は小さな広告会社で、企画やイベントに応じた広告を作成、掲載、配布するのが主な仕事だ 簡単そうに見えて案外難しい ここに話を持ちかける他企業の方々はオーダーが多い ここはこういうデザインでこういうイメージにして…なんて、全部覚えられるようなできた人間はいないって さらにクライアントも案外多い なのに何故会社が小さいかって? それはな… 「ほら神崎、茶ぁつげ、茶ぁ」 「おい神崎、サボるなら給料差っ引くぞ」 「おら神崎、早くチラシまとめろ」 ……とまぁ、上司がこれなら部下はついてくるわけがない もちろん同期はみんな辞めていった つまり残った当時の新人は俺一人 そりゃ人手が不足する なのに原因が自分達と気付けない大人達 慕われていると勘違いをしているようだが断じてないと宣言しよう もちろん心の中だけで 「ほら、茶はまだか!!」 「はい、ただいま~…」 …こんな毎日、正直なんとかしたい
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