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暗闇の森の中。目さえ開けることが困難な豪雨の中で。
「ぐっ……!」
振りかざされる剣に左肩を斬られ、リレスは歯を食いしばって激痛に耐えた
ここで自分が倒れれば、後ろの木に隠れている少女をこの男から守る者が誰もいなくなるのだ。
左肩から流れる血をそのままに、木に寄りかかる
利き肩が無事だったのは不幸中の幸いだった。両手に持っていた剣を右手だけで構える。
「リレス!リレス!!」
だが、その時、自分を呼ぶ声が聞こえた瞬間、突然視界が明るくなったのだ。よく見ると、リレスの母親が見える
「大丈夫。また魘(うな)されてたみたいだけど……」
…夢…また同じ夢。いったい何度目だろう……?
今のリレスはいつ死んでもおかしくない死の病の身なのだ。
「大丈夫です母さん。なんでもないですから」
母親から視線をずらしウソをつく
母親は、そうと一言だけ呟き、部屋から出ていく、リレスは自分の胸の辺りに触れ自分の身体を憎むかのように服を握りしめた。
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