せめて、人の人による人のために

1/9
前へ
/271ページ
次へ

せめて、人の人による人のために

日付が変わり、二時間をほど経過してから、その男はやってきた。 全身を、黒で統一した服で身を包み、がちょがちょと、背なのリュックが音を立てる。 神父は、このような出で立ちで教会にやってくる者を、何人も見てきた。それもあってか、こんな夜更けにやってきた招かざる客を、恐ろしいとも感じなかったし、追い返そうとも思わなかった。 ただ、彼が、償えるほど優しい人間であることが、どうしようもないほど哀れだった。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加