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「は? 無理」
「そう言わずに頼む。お前がバイトで入ってくれたら店の経営危機が逃れられるはずなんだよ」
――高校3年に上がる前の春休み。
久々にこのみと薫の店に行ったら、唐突にタカさんに頼みごとをされてしまった。
『ここでバイトしないか?』
なんて、するわけないでしょ。
今年は受験とかあって忙しくなるだろうから、この春休みはこのみと一緒に過ごすって決めてんだよ。
……それに。
「なんで俺がバイトすると店の経営がよくなるんだ」
「客寄せだよ秀一くん! 君のその素晴らしい容貌があれば女性客がたっくさん来る! ついでに俺もそこで出会いが見つかるはずだ!」
「何言ってんだよ。薫に惚れてるクセに」
薫に惚れてるから、腕はあんのにあんな儲からない店にいんだろ。
「なんだ、知ってたのか」
もっと動揺するかと思ったのに、全くそんな様子を見せないタカさんに俺は正直驚いて、ハッとしてタカさんを見た。
「まあそれはいいからさあ、冗談抜きでお前客寄せしてくれねーか?」
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