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『はぁ…』
昨日と全く同じテンションでの一日が始まった。
まだ寝起きの俺の部屋に理沙が飛び込んできた。
『お兄ちゃん、メリーバレンタイ~ン!!』
口の中に無理やりチョコレートを押し込まれた。
甘い…いや、正直甘ったるい。
しかし、妹の手前そうは言えず、
『うまいよ』
と笑って見せた。
『でしょ~!さすがあたし』
理沙は満足そうに部屋を出て行った。
俺はどうやら味見役だったらしい。当日で大丈夫なのか?
そうも思えたが気にせずいつものように登校の準備をした。
ふと机の上の定期入れが目に入った。そうだ、これを渡さなくちゃいけない。俺は定期入れを胸ポケットにそっとしまった。
『はぁ…』
いつもよりも女子のはしゃぐ声が大きい気がする通学路。
憂鬱だ…。
一歩ずつ足取りが重くなっていく。定期入れを渡す義務さえなければ、仮病で休んでしまいたいくらいだった。
ため息はやはり真っ白。
2月の風が俺の冷えた心をさらに凍らせた。表情は暗い…また拓海に心配されるな…そう思いながらとぼとぼと学校へと歩みを進めた。
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