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『はぁ…』
外はよく晴れている。
だがまだ2月半ば、布団からは出たくない。まぁ、理由は寒さだけじゃないのだが。
今日は2月14日…の1日前。一年で最も憂鬱な日を明日に控え、
いよいよ俺の脳は身体を鉛と化す命令を下している。
『純!いつまで寝てるの!遅刻してもしらないわよ』
おふくろの怒鳴り声がドアの向こうから聞こえる。
おそらく5分後にはじゃじゃ馬が殴り込みをかけてくるだろう…。
重たい腰をあげ、洗面所で顔を洗う。鏡に映る俺の顔には全く覇気が無い。誰がどう見ても病人の顔だ。
『全く…ひどい顔』
ふと気がつくと鏡の向こうにじゃじゃ馬が一匹。
もうしっかり制服姿で俺を睨み付けているのは、妹の理沙。
『あたし、先に行くからね。早く食べないとパン冷めちゃうよ』
理沙は俺とは真逆に普段より元気だ。まぁ、別にうらやましくも思わないわけだが。
顔を洗い、すでに冷め切ったトーストをかじりながら着替えを済ませ、俺も家を出た。
外は寒い…
マフラーでしっかり襟元を暖め、吹き付ける木枯らしに身をかがませながら通学路を歩く。
『はぁ…』
ため息が白い。
俺の顔も青白い。
明らかに学校に行くのを拒んでいる。忘れもしない去年の2月14日。あの日から俺は2月14日がトラウマになった。
『はぁ…』
相変わらず出続けるため息。
その白さが余計に俺の歩みを鈍らせた。
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