~2月13日 純~

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『おはよう!』 教室の中は、俺の気分など全くお構いなしに来たるべき日に備えお祭り騒ぎだ。 もはやため息すら出ない。 俺はドカッと机にカバンを放り投げ、乱暴に椅子に腰掛けた。 『おい純、やけに機嫌悪いじゃねえか。どうしたよ?』 クラスメイトの拓海が心配そうに俺を見ている。 拓海は高校からの友人で、 去年俺が中学で味わった悲劇を知らない。 『何でもねーよ』 拓海の心配をよそに、 俺は視線を窓の外に移していた。 思い出される中学最後のバレンタインに起きた悲劇。 高校で離ればなれになる憧れの子からもらったチョコレート。 野次馬からの冷やかしじみた祝福…照れ笑いの俺。 しかし、彼女から想いも寄らぬ一言が俺の胸に突き刺さった。 『あの…それ、純くんから亮太くんに渡しておいてほしいの。ほら純くん仲いいでしょ?お願い!』 俺はそのときどんな顔をしていたのか覚えていない。 とにかく、律儀にチョコレートを亮太に渡し、ヘラヘラと作り笑いをしながら平静を装ったことは記憶している。 あの時現場を目撃していた友人たちの哀れみの目が、俺にこの憂鬱をもたらしたと言ってもいいだろう。 『起立!』 学級委員の号令で我に帰り、俺はブンブンと顔をふりながら忌まわしき過去を振り払った。
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