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『なぁ、今年はチョコレートもらえるかな?』
拓海がニヤニヤしながら聞いてくる。人の気も知らないで…とは思わない。健全な男子ならそう思うだろう。俺が歪んでいるだけ。
『いらねーよ、チョコなんか』
そう吐き捨て俺は帰る準備を始める。拓海はなぜ俺に邪険にされているのかわかるはずもなく、つれねえやつだと言わんばかりにため息まじりに自分の席へ戻って行った。
とにかく、明日が終わればまた平穏な日々が始まる。
そう自分に言い聞かせ、足早に教室を出ようとしたとき…
ドンッ!!
『きゃぁ』
出会い頭におもいっきり一人の女子生徒とぶつかった。
『ごめん、大丈夫?』
隣のクラスなのか、全く知らない子だった。眼鏡をかけた、いかにも真面目そうな女の子。
『はい、大丈夫です。こっちこそごめんなさい』
その子はペコリと深いお辞儀をして目も合わさずに走り去ってしまった。
ふと、足元を見ると定期入れが落ちていた。
渡さなきゃ!と拾いあげて顔を上げたときには彼女はいなかった。
名前がわかれば渡せるか…と思い、若干気が引けたが定期の印字を見ると…
(ハヤシダ アミ 19950214)
定期にはそう印刷されていた。
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