~2月13日 亜美~

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『ただいま~』 母の声がした。 がさがさと買い物袋を整理する音が聞こえる。 次に戸棚をバタバタと開け閉めする音が聞こえてきた。 何かの準備をしているようだ。夕飯にはまだ早い。何だろう?私は読みかけていた本にしおりを挟み、聞き耳を立てていた。 ん?何だかいいにおいがする。いてもたってもいられず階段を降りると、なんと母はクッキーを焼いていた。 『ママ、どうしたの?』 私の問いに母は満面の笑みで、 『去年パパが会社の子からバレンタインもらってきてデレデレしちゃってさ。悔しいから今年は準備してるのよ』と味見をしながら私に言った。 そういえば、私の誕生日パーティーの最中にそんな小競り合いをしていたのを思い出した。 ふと…私の中で何かがはじけた。 『ねぇ、ママ。私も一緒に作っていい?』 あら、珍しい。と言わんばかりに目を丸くした母と、私はクッキーを一生懸命作った。 誰に渡す?? そういうわけではなく、いっぱしにバレンタインの前日にクッキーを焼く自分に酔いしれたかっただけかもしれない。 とにかく、 私のお世辞にも上手とはいえないバレンタインプレゼントが出来上がったのだった。 私はそれをそっとカバンに忍ばせた。 『うん、持ってることに意味があるのよ!』 そう自分に言い聞かせ、 私はいよいよ誕生日当日…いや、世間一般でいうバレンタインデーを迎えるのだった。
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