PHASE─1 『スティンガー』

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 その通信は、変形した二機の遥か後方、空中戦艦『ブルーナディア』へも届いていた。  『ブルー・スカイナイツ』の旗艦であり、大型の主力空母である。  左右二連のカタパルトと後方のサブカタパルト、カタパルト脇の主砲と船体各部に備え付けられた機銃座。  その高い攻撃力と機動力から、強襲型巡洋艦としても知られている。  そんな『ブルーナディア』のメインブリッジ──     「どうやら大尉の設計した“変形機構”は成功のようだな」    キャプテン・シートの隣の補助シートに腰掛けながら、銀髪を短く切り揃えたカイゼル髭にモノクルが特徴的な、軍服を隙なく着こなした初老の男性は、静かにそう呟いた。   「は……ありがとうございます」    そう振り向き様に敬礼したのは、歳の頃なら五十代前半の、黒髪の同じく軍服の男性。  シートの手前に直立する姿勢には隙がない。    ──変形機構──    それは、『政府軍』大尉、『クランツ=レイ=ラキシス』が考案・設計した、戦闘機を“人型”に変形させると言う初の試みだった。  旧時代のアメリカ空軍や日本の自衛隊等で主力だった『F16』型の戦闘機をベースにした、人型機動兵器『M・G(モビル・ギア)』への変形と言う立案は、エデンにおいて画期的なものだった。    ──『M・G(モビルギア)』──    それは、居住の場を移した人類が、エデン暦0120年に開発した“人”の型をした機動兵器だった。  “人型”──それは、兵器としてだけではなく、建設機械や、その他広い分野でも汎用性が認められ、エデンにおける産業の中核をも担っている。  まぁさておき──  エデンにおける全ての機関には、当然の如く『AUBE』が組み込まれているが、戦闘兵器である『M・G』も例に漏れず。  “人型機動兵器”は、戦車や戦闘機に変わる主力兵器として、広く配備されている。
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