PHASE─1 『スティンガー』

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「隊長、お疲れ様です」   「うむ」    クリスは敬礼を返すと、僅かに表情を緩めた。   「ご苦労だった。後は身体検査だが、それが終わったらゆっくり休むと良い」   「はっ!ありがとうございます」   「とまぁ、固いのはここまでだ。ホラ、お迎えが来てるぞ」   「え?」    言われてクリスの視線の先に顔を向ければ、こっちに手を振る少女が眼に入る。  長く赤い髪を、横っちょにポニーテールで結った、まだまだ幼さを残す顔立ちの美少女。  少女とは言っても、纏っているのは女性士官用の軍服だったりする事から、子供ではないのだと認識せざるをえない。  『アスカ=リィネ=ラキシス』少尉19歳。  くだんの『ラキシス』大尉の娘で、士官学校を主席で卒業した秀才。  M・Gの研究・開発部門に所属し、父クランツの助手を務めている。  因みにユウキとは幼馴染み。  ユウキは、一つ溜め息を吐いた。   「隊長……お迎えって」    ジト眼向けるユウキに、クリスは不敵な笑みを浮かべつつ、ポンと肩を叩く。   「まぁそう照れるな。羨ましいじゃないか?幼馴染みの彼女なんて」   「……そう言う隊長だってリヴィエラ艦長と」   「ハッハッハ!じゃあ後でな」   「聞けよ!」    顔立ちにマッチしない豪快な笑い振り撒きながら、クリスは去っていったのだった。   「ああ言うトコがイケメンのくせにおっさんクサ……」   「ユっウキ!」    溜め息吐いて肩をゲンナリと落とすユウキのもとに、アスカがちょこんと到着する。   「おまいな……職場にいる時ゃ、気安く」   「別にいいじゃない?隊の皆はもう知ってるんだから」   「そう言う問題ぢゃねぇっての」    はぁあぁぁ……と、本日幾度目かの溜め息一つ。  そう。  二人の関係は、もうとっくにブルー・スカイナイツ隊内には知れ渡っている、いわゆる公認カップルだったりする。
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