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その女の子は10年という短い生涯を閉じました。
湯灌という《おくりびと》でも有名な納棺作法での出来事です。
納棺師さんは女の子の生前の写真を元に、まるで眠っているかのごとく完璧なメイクをしました。
いかがですか?
納棺師の言葉に女の子の近くに寄り添う両親。
お母さんは納棺師さんに言いました。
香水を付けてあげても良いですか?
この娘が、いつも付けてたんです。
…いつも?
その場に居合わせていた私は疑問に思いました。
納棺が終わり、一息ついたお母さんに私は尋ねてみました。
いつも付けていた。とは、どういう事ですか?
お母さんは話してくれました。
お見舞いに行くと
女の子は、いつも香水をつけてほしい。と、ねだっていたそうです。
なぜでしょう?
それは、女の子は早く大人になりたかったから
女の子の居た小児病棟では、子供達は皆、病弱で
大人達は自分の治療をしてくれる強いお医者さん、優しい看護師さん、お見舞いに来て力強く励ましてくれる両親。
大人になれば自分の病気なんて、やっつけられる。
そんな思いがあったのかもしれません。
早く、
1日でも早く
強くて
優しい大人に。
あくまでも私の推測ですが…
でも、それは本当は…
お母さんの香りを嗅いで居たかったんじゃないでしょうか?
お母さんのような強くて優しいお母さんに憧れていたのではないでしょうか?
真実は解りません。
ただ、夜空に星が煌めく秋の日の出来事でした。
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