たい焼きの唄。

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今日のお通夜、仏さんはお婆ちゃんだった。 息子さんである喪主様は祭壇にたい焼きをお供えした。 最近の白いたい焼きじゃなくて、普通の茶色いヤツ。 お母さまが、お好きだったんですか? 俺の問いかけに喪主様は話してくれた。 それは数十年も前の話し。 喪主様のお宅は、お爺ちゃんが働くのが嫌いな人で、 お婆ちゃんは、女手1つで喪主様達、子供3人を育てたらしい。 隣の街まで働きに出かけたお母さんを幼かった喪主様達兄弟は迎えに行き、 毎日、夜遅く一緒に帰っていた。 喪主様達は学校が終わると兄弟揃って隣の街へ歩いて行って、お母さんの仕事が終わるのを、その仕事場で遊んで待つのが日課だった。 ある日、お母さんの仕事が早く終わり 夕方、真っ赤な夕陽の中、お母さんとたい焼き屋さんでたい焼きを買い、皆で食べながら帰った事を今でも覚えている。と その時も、お母さんは 自分は、お腹がいっぱいだから皆で食べな。 と言って自分は一口だって口にしなかった。と 大人になった今でも、たい焼き屋さんを見ると思い出すねえ😃 普段、何気なく口にしているたい焼き1つでも素敵な物語が秘められていました。
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