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その人形は、可愛いらしい女子中学生のお孫さんから、おばあちゃんに送られました。
その人形は、けして高価なモノではなく、
むしろ、ゲームセンターの景品と言った様な、ぬいぐるみです。
しかし、そのお孫さんの想いと希望が詰まったぬいぐるみは、
おばあちゃんの孤独な闘病生活を、どれだけ支えた事でしょう。
おばあちゃんは片時も、そのぬいぐるみを手放さず、
常に脇に抱えていたそうです。
いつも変わらぬ笑顔で、おばあちゃんを励まし続け、
お孫さんの想いを届け続けた真心のこもったお人形。
そのぬいぐるみは、おばあちゃんが亡くなった後、
お孫さんが、ずっと抱きしめ続け、
その悲しみの涙を見続けていた事でしょう。
永遠に変わらない、
その笑顔で。
そのぬいぐるみは、今日、
そのお孫さんの手により、
柩の中に納められました。
変わらぬ笑顔のまま。
お孫さんの手は、
震えていました。
その眼から溢れる想いは、
頬を伝い、
ぬいぐるみを濡らしました。
泣き、
叫びました。
そのぬいぐるみは、
変わらぬ笑顔のまま、
泣いていました。
悲しみの大きさは、
人それぞれで。
その想いの大きさも、
また、人それぞれですが。
ただ、一つ確かな事は、
皆、人それぞれに悲しみを、
自分の力で、
乗り越えないといけないのでしょう。
その、ボロボロになったぬいぐるみは、
最後に、
少しだけ、
優しい少女の背中を押してくれました。
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