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これは、少し前に依頼を受けた葬儀の話し。
その仏さんは、26歳の女性、まぁ、自殺だった。
柩に横たわる彼女の顔は、とても安らぎに満ち、穏やかだった。
祭壇の遺影写真は、その顔と対象的に、生に満ち溢れた眩しい程の笑顔だった。
あのさ、
だけどさ、
無口なお姉さんさ、
その写真を撮った時って、こんな使い方をする為に撮ったんじゃないんじゃないの?
その写真を選ぶ両親の事、想像したかい?
あなたの友達は、菊の花よりバラの花を、あなたに送りたかったんじゃねぇの?
なぁ、みんな黒い服なんか着て、泣いちゃってるぜ?
そりゃ、俺は、あなたの事、全然、知らないけどさ、
誰からも愛されてないなんて事は、これっぽっちも無かったんじゃねぇの?
なぁ?
ほら、キミのお母さんがとびっきりの珈琲を煎れてきてくれたぜ?
良い香りだ。
冷めないうちに一口ぐらい飲んでやりなよ?
なぁ?
思い出の展示場にみんな集まってるぜ?
何故だか解るか?
誰も、あなたの顔を見るより、あの日の思い出をみたいのさ。
あなたの居ない現実なんて誰も見たくないのさ。
なぁ?
あなたは見えますか?
今、この暗く悲しい空間を。
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