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“嫌だ。”
「嫌だ。」
アオイの言葉をカイがそのままカズマに伝える。
カズマは、その一言で険しい顔になった。
“…俺は…ギターだけ弾くつもりはない。”
「“…俺は…ギターだけ弾くつもりはない。”」
“俺は、歌いたいんだ。”
「“俺は、歌いたいんだ。”」
アオイにとってみたら、またバンドを結成することなど、どうでもよかった。
歌うことで自分の存在があったようなアオイに、“歌わなくてよい”というのは、アオイの存在を否定するに等しい。
アオイに喧嘩を売るようなものだった。
「…でも、アオイはもう歌えないじゃないか…。」
だから…、とカズマもカズマなりに退こうしない。
“…そんなこと、誰よりも自分自身がわかってる。
それでも…、歌いたいんだ。”
「…そんなこと、誰よりも自分自身がわかってる。
それでも…、歌いたいだ。」
「…アオイ。」
“…だから、俺が歌えるようになるまで、あのバンドに戻るつもりはない。”
「…だから、俺が歌えるようになるまで、あのバンドに戻るつもりはない。」
そういうアオイの表情は、はかなくも凛としていた。
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