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“………ーッ
ハァ……ッ…。”
…パチッ。
歌終えたアオイが息をつくと、乾いた音がなった。
パチ…パチパチパチ。
次第に多くなるその音。
しばらくして、拍手だということにアオイは気づいた。
どうなっているんだ?。
見物客からの盛大な拍手。
その光景に驚きつつも、アオイは、“ありがとうございました”と拍手をくれた見物客に何度も礼をした。
まるで、ライブ後のアーティストのようになった気分だ。
……気持ちいい。
久しぶりに歌ったあとに感じた、その感覚。
声が無くても、客を引き付けることはできるんだとアオイは実感した。
しばらく、経つと見物客は、徐々に散って行く。
それを見計らうと、アオイはギターを持ち主に返した。
“ありがとう。”
声のない言葉で、礼を言う。
彼は、目を見開いてアオイを見たまま、…いえ、こちらこそ。とギターを受け取った。
「さすがだな…、アオイ。」
そういいながら、先程まで客と混じっていたカズマが歩いてきた。
…カズマ。
「…お前は、本当にすごいよ。」
“…ありがとう。”
感謝の言葉を口にする。
言葉が出ない変わりに、わかりやすいようにゆっくりと口を動かした。
カズマも言った言葉をわかってくれたようで、微笑んでくれた。
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