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「今日は悪かったな。
お前の声が戻るのを楽しみに待ってるよ。」
そう苦い顔して言うカズマに、笑ってやる。
“期待してろ。”
「…あぁ、期待しててやるよ。」
ニカッと笑うカズマ。
まるで、言葉が聞こえたかのようなタイミングで答えた。
本当に聞こえているんじゃないかって思うほど、ナイスタイミング…。
――――――
――――――――……
「…じゃあ、またな、アオイ。」
“あぁ、またな。”
カズマは、これから用事があるらしく、そっちに向かうと言っていた。
手を振って去っていくカズマに、アオイも軽く手を振って見送る。
久しぶりに昔の友人に会うのも悪くないかな…。
小さくなっていくカズマの後ろ姿にアオイはそう思った。
声を失ってから、そんなこと一度も思ったことはなかったが、今はそう思える。
これも、カイのおかげなのだろうか。
だったらカイに感謝しなきゃな。
フッと、アオイに笑顔がこぼれた。
…そういえば、カイがさっきから見当たらない。
アオイが歌い終えてから、カイの姿を見ていない。
トイレにでも行ったのか?
「…花森 葵様ですか?」
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