Blue

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  いつからだっただろうか。 気がついたときには、声を失っていた。 ――アオイの声は     とても綺麗だね…―― よく女子が褒めていた声。 それだけを理由に始めたバンドのヴォーカルは、呆気なく、終わってしまった。 単純な理由だったけど、ヴォーカルをやっているうちに歌うことが大好きになってしまった。 なのに、突然、なくなってしまった声。 その突然の出来事に着いて行けなくて、始めは悲しみに明け暮れていた。 泣いても、泣き声すら出ない自分の声に、アオイは生きる気力を失ってしまった。 ただ何の楽しみもなく生きる日々。 最近では、この時間帯に外に出て散歩するのが日課になっていた。 静かな夜に、アオイの心は落ち着いたのだ。  
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