Blue

34/38
前へ
/38ページ
次へ
   ・・・・・・? 突然、二人を切り裂くように凛とした声が聞こえた。 え? 瞬間、アオイの目の前に艶のある黒髪が映る。 いつの間に? そんなことを思っていたら、アオイの手にあった温もりがないことに気がついた。 手元をよく見れば、カイに掴まれていた手が離れてしまっている。 「デスエンジェル…;」 「イオさま。」 震えているカイの声。 緊張の籠っているその声に、こいつはやばいとアオイも察した。 「悪魔にしては、いいやつだが、悪いな。 こちとて、大天使の命令で、歌うたいがかかってるんだ。」 「まさか、…あんたまで遣すとはな。」 どうしてだろう、なんだか空気が重く感じる。 「大天使が、どうも様子がおかしいというんでな。 さぁ、花森 葵。 お前の幸せを願え。 …何を、願う?」 そう言って、アオイの方に振りかえったイオと呼ばれた天使。 初めて、アオイの目に彼の顔が映った。 少し長い前髪の隙間から、切れ長い目が覗いた。すっと通った鼻筋に、形のいい柔らかそうな唇。肌は透き通るように白くてシミ一つない。 これほどまでかというほど整った顔がアオイの瞳に映った。 かっこいいとか、イケメンとか、そんな言葉より、美形、美人、そんな言葉がぴったりだ。 整いすぎたその顔に表情などなくて、その分、ものすごい迫力に圧倒される。 「あ……。」        「ダメだ!!アオイ! 言っちゃいけない。」 必死なカイの声が聞こえる。 でも、カイの言葉など、受け止められない。 その迫力に逆らうことなどアオイにはできなかった。  
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加