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しばらく歩いて着いたのは、近所にある殺風景な公園。
唯一ある遊具は、滑り台と鉄棒。
その小さな公園にある唯一のベンチに座ると星空に顔を向けた。
ゆっくりと深呼吸をする。
夜空に、音を放った。
「………ッ。」
“ボクらは、一方通行
後戻りなど出来ない
人生を歩み続けているんだ
ただ前を向き、未来を見つめる
たとえ、
どんなにその未来に恐怖しても
ボクら歩まなければいけない
どんなに辛くても
いつかきっと過去になるから
そんなこともあったねって
言えるような未来をつくるんだ
聞こえないくらいの小さな歌を君に贈ろう
君にしか聞こえない歌を届けよう
ボクの声、聞こえてますか?”
出るはずもない歌声。
端から見たら、空に向かって口を開いたり閉じたりしている奇妙な光景かもしれない。
それでも、アオイは、いつか、きっとまた歌えることを願って、懸命に声を出す。
声が消えてから、作った曲。
自分自身への応援と、歌えるようになったら応援ソングとして使うために作った曲だ。
届くはずもない歌声は、口から出ることもなく何度も消えていった。
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