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次に目が覚めた時には、すっかり日が落ち病室らしきこの部屋には誰の姿も見えない
少し不安になってきた、その不安は何から来ているのだろうか?
まだ痛む頭を抱えベッドから起きあがってみる
自分に問うみたいに呟く
「…うん、大丈夫みたいだ」
そして青い月明かりに導かれるように、そろりと窓へと向かう
そこから見えるのは月を背にした巨木の影と木々の群れ、そして無機質な大小沢山の鉄塔、それらの黒々とした影が空を覆うように広がり、そしてその根元にあたる所には街明かりらしき光の群れがチカチカとまたたいている
「な…なに!?…鳥カゴ…!?」
そう、まるで、ねじくれた枝で編んだ巨大な「鳥カゴ」
悪夢にでも出てきそうな異様な街が目の前に広がっていた
「大丈夫かぁ?」
突然の声に驚き振り返ると無精ヒゲの男が部屋に入って来た所だ
僕が外の景色に圧倒されている様子を見ると
「やっぱり、迷子?」
と、軽い調子だ
「おじさん、誰?」
僕の第一声に、無精ヒゲの男は大げさにコケる素振りをした
「これでも若いんだぞ~、ダイキ『兄さん』って呼んでくれよ~」
と、何気に若さをアピールした自己紹介をした
「んで?僕ちゃんの名前は?」
僕にも自己紹介を促す。
が、子供扱いする言い方に少しムっとしてしまった。僕は子供扱いされるのは嫌いだ
それでも世話になったらしき相手に対して名乗るが礼儀かと思い直し
僕も自己紹介
…のつもりが、言葉が出なかった…
正確には言葉にならない
したくても出来ないんだ
なぜなら自分の名前を知らないから…
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