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最低な気分だ。
何故こんな事になっちまったんだ。
ルーンは電話でリリに今夜は会えないとだけ伝えた。
なるべく明るい口調で、何事も無かったかの様に。
「残念。今夜ルーと見ようと思って借りた映画があったんだけど。」
リリの聞き慣れた声に一瞬だけ心を癒されたが、次の瞬間にはジャスミンの言葉に気が滅入りそうになっていた。
ルーンは電話を切った後、ジャスミンの待つバーへ重い足取りで向かった。
「ルーン。遅かったじゃない。待ちくたびれたわ。」
そう言ってウェイターにワインをオーダーし始めた。
「赤ん坊によくないだろ。それに煙草だって…。」
ルーンはテーブルの灰皿に何本も潰された吸殻を見て言った。
「平気よ。アタシのマムだって妹を産む時吸ってたわ。妹は何ともない健康そのものよ。ほら、我慢って身体に良くないじゃない。」
ルーンは思わず溜め息をついた。
「で、俺にどうして欲しいんだ。君と関係があったのは認める。でも君があの頃他の男と寝てたのも知ってる。君もそれは認めろよ。だからといって俺は逃げるつもりはない。だけど俺は自分の子供じゃないかも知れのに面倒をみるのは御免だ。ハッキリさせよう。」
ルーンはうだうだと彼女と話をしていたくなかった。早く話を終わらせてこの場から立ち去りたかった。
「そうね。確かにあなたの他に父親かも知れない男は居る。認めるわ。」
ジャスミンはいつになく素直に認めた。
昔の彼女なら、たとえそれが本当でも絶対に認めたりはしなかったのに。
「だけどこのベイビーはあなたと育てたい。あなたならきっと上手くやってくれる。他の男はろくでなしばかりだもの。あなたはやっぱり良い男だわルーン。」
「俺はろくでなしの奴のかも知れない子供なんか育てたくない。それにもし俺の子供だったとしても、君と結婚する気はないぜ。」
「じゃあどうするつもり?毎月高い養育費を払うの?それともあなたが引き取って、あのジャパニーズガールと育ててくってわけ?」
「…何で知ってるんだ。」
「何でって。あなたが女の子と歩いてるのこの間見たの。まるであなたの妹みたいね彼女。あなたがああいう子と付き合ってるなんて信じらんない。」
そう言ってジャスミンは大きく笑った。
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