vol,2

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ルーンがアパートメントに戻った時にはびしょ濡れになっていた。 バーを出た途端、大粒の雨が降り始めたからだ。 ルーンはそんな雨に気を取られる余裕すらなく、ただ歩いた。 雨に濡れようとも自分の状況が変わる事はない。 傘が無ければ濡れる事を避けられない。 それと同じように彼の状況にも傘がないのだ。 「ルー!ずぶ濡れじゃないの!風邪引いちゃうわ!」 先にアパートメントに着いていたリリはドアを開けた瞬間叫んだ。 そしてタオルを取りに急いでバスルームに走った。 「傘が無いなら迎えに行ったのに。」 そう言ってリリはルーンの頭に優しくタオルを被せた。 「…ありがとう。」 そう言ってルーンはリリを抱き締めた。 濡れたままのルーンに抱き締められたリリのシャツも少しずつ水分を吸収してゆく。 しかし彼女は何も言わないままルーンに身体をゆだねた。 「どうしたの?」 リリはそっとルーンの背中を撫でた。
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