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「私と……付き合ってください!」
春の気配なく未だ寒さが猛威を振るう二月十一日。
六手高校の体育館裏。
宮沢太一に一足早い春がやって来た。
バレンタインという死刑執行日が迫り来る恐怖に枕を濡らし、
「義理チョコならあげるから」
という幼馴染の哀れんだフォローに枕を腐らせ、当日は一緒に慰めあおうな、と友情を誓い合った親友から送られてきた『件名:一目惚れされちゃった』という幸せいっぱいのメールに枕を買い換えた(もちろんメール読まずに削除)。
それがどうだ。今、目の前にいらっしゃるは入学時から密かに憧れていた学年で五指に入る美少女であり、クラスメイトでもある竹之里 恵。みるからに華奢な体つきが可愛いし、整った鼻と潤った唇と優しげな光を帯びた瞳が可愛いし、肩まで伸びた髪が風に溶けていくように揺れる様が可愛い。
何より、恥ずかしさをこらえて告白し、普段真っ白な柔肌をピンク色に染めて俯いている姿が可愛くてたまらない。
今日帰ったら日記帳を買おうと太一は心に決める。恵と歩む薔薇色の高校生活を一日残らず記すためだ。
「俺で、良かったら……」
本当はその場で抱きしめて悶えたいくせに、十六歳のプライドが『カッコイイ俺』を創りあげる。
そして竹之里 恵はそんな太一の姿に天使のように優しく微笑み「……嬉しい!」と飛び込んでくるのだ。
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