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――私と、付き合ってください!
いいよ。
――嬉しい! 宮沢君……ううん、太一君。大好き!
俺も好きだよ、恵ちゃん。
――ねえ、明日の日曜日、空いてるかな……?
初デートだね、どこに行こうか?
――太一君、私、今日は帰りたくない……。
「お……おおおおおおおおおおおお……!」
膝をつき、唸るように太一は泣いた。幸せしか待っていなかったはずの未来は、儚いどころか咲く前に砕け散った。告白をされたはずなのに、追いすがったのは自分だった。年齢=彼女いない歴の男が3倍速で描いた未来予想図は童貞の痛い妄想へと変貌し、やってこない幻想だと受け入れられない脳が次から次へと二人の甘い青春を展開させていき、それが更に涙を誘うスパイスとなる。
「君、もういい年なのだから、人前で号泣するのはあまりに情けないとは思――うぐっ」
「おおおお! おおおおおおおおお……」
このとき、太一は自分がどれだけ悲痛な顔だったかを知らない。溢れる涙を拭おうともせず、鼻水も垂れ流したままあらゆる現実を拒絶するように首を振る様を見て、ゴスロリの女性が思わず後ずさったことも、知らない。
泣きつかれてその場に倒れこむまでたっぷり二時間弱、太一は叫び続けたのだった。
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