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「私はサーシャという」  すっかり陽も落ちて真っ暗になった教室で机に腰掛けたサーシャはゆっくりと話し始めるが、その顔にはすでに疲れが浮かんでいる。  太一が「大丈夫か?」と気遣ったところ「ありがとう、だが心配するなら円滑に喋らせろぶっ殺すぞ」と微笑まれたために、太一は継句を失いただの人形と化す。 「ところで少年、先ほどのことだが」 「……あんまり思い出したくねーんですけど」  ぶっきらぼうに答えながら、枯れたはずの瞳が即座に潤いを帯びる。  できるなら家に帰り布団を頭から被って眠り、今日という日を闇に葬ってしまいたい。可哀想な自分に酔いしれたい。  けれど、泣きはらし幾分冷静になった頭で考えてみると、恵の行動には不可解な点が多い。そこにきて図ったようにその場に居合わせた人間が 「事情を話してやるから一緒に来い」  と申し出ればついていかない理由は無いだろう。自然にかさぶたが出来るまで待つには、受けた傷は深すぎるのだ。  言われるがままに、太一は今朝からの流れをポツポツと話し出す。思い出したくも無い、数時間前の出来事に至るまでの過程を。
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