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トモハルは自殺をすることにした。
場所は学校の屋上。
理由は単純。
自分だけを愛してくれていると信じていた女性の浮気が発覚したからだ。しかもその相手はトモハルの親友とも呼べる存在。恋人のナツミと親友のトウマ。大切な人間二人から同時に裏切られ、トモハルは生きる希望を見失ってしまったのだ。
つい先程、トモハルはナツミにメールを送った。自殺する人間として最も質の悪い遺書であるが、それほどにトモハルは絶望していた。自分がどれだけトモハルを傷つけたのか、ちゃんとナツミに分かって欲しかったのだ。
昼間職員室からこっそり持ち出した鍵を差し込み、所々錆びの目立つ扉を開け外に出る。ぎぃという摩擦音の直後にトモハルが感じたのは、恐怖。視界を埋め尽くす夜特有の闇が、この後待ち受ける絶対死への恐怖を増幅させる。
それでもトモハルはより速く歩を進める。胸の内に広がる恐怖は、自殺の動機である絶望をより強いものにするからだ。この恐怖と絶望を拭い去ることは今更できない。だから、自らの身と共にこの暗闇に投げ出し、永遠に葬り去るのだ。
身の丈以上の高さのフェンスを乗り越え、校庭を見下ろす。
トモハルの胸の内と同じ、暗い、暗い景色。
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