ある雨の日

2/7
前へ
/17ページ
次へ
 街路樹が揺れている。静かに窓を叩く雨の音が、お前のいないこの部屋を満たしている。 【ある雨の日】  窓の外を眺めていた彼が怠そうに動いた。熱いエスプレッソを飲みたくなったからだ。  「面倒だな…」  そんな事を一人ごちながら、彼はキッチンでエスプレッソ入れ、再び窓辺の席へと戻ってきた。  夕べ、大きなヤマを成功させた彼らは本日オフを楽しむはずだった。もちろん三人三様にだ。彼も街にでも繰り出して楽しく過ごそうと思っていたのだったが、今日は生憎の雨。絹糸のような銀髪がさも鬱陶しそうに揺れ、今一度窓の外を眺めた。 別に一人がイヤな訳ではない。 .
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加