ある雨の日

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 上背のある男が携帯をジーパンのポケットから取り出した。  「あれ?出ねぇ」  まぁいいかとばかりに携帯をポケットへと戻す。そして空を見上げて、人好きのする笑顔になった。大型犬のような彼だが彼も怪盗だ。コードネーム、ボディ。鍛え抜かれた肉体が武器で、フィリップの仲間だった。  雨の日に、出かけることを嫌うフィリップをからかってやろうと彼は出かけてきたところだった。まぁ表向きの用件はそんな感じだが、実際はフィリップに会いたいだけなのだ。  うきうきと急ぎ足が水たまりも気にせずに走り出した。  「待ってろよ」  もうすぐ熱いエスプレッソの香りと、会いたい彼が待つ部屋だ。部屋に着いたら、驚く顔がみたい。次ぎにアイツは絶対に俯く、そして何か憎まれ口が二言、三言あって。オレを迎え入れる。  そしたら、二人でおいしいランチでも食べに行こう。雨はもうすぐあがるだろう。 .
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