5人が本棚に入れています
本棚に追加
森の奥の小さな小人の小屋に、麗しの姫はいた。
幸いにも小人たちは仕事にでていて姫しか居なかったため、すこし手間が省けた。
魔女は、醜い老婆の姿に黒いマントで頭から全身をおおい、手には真っ赤な林檎の入ったカゴを下げた。
不信には思いつつも心優しい姫は老婆を小屋の中に入れ、疲れている様子から水を一杯差し出した。
「有り難う。ああ、ところで林檎を一ツいかがかな?」
「いえ、今は別に…」
「真っ赤に熟れていて、甘くてとても美味しいよ?」
老婆は姫に詰め寄り、一番赤い林檎をズイッと差し出した。
「一口食べればなんでも願いが叶うんだ!さぁ!一口でいいからお食べ!」
老婆の勢いに圧され、林檎を受けとってしまった。
姫は林檎に向かってそっと呟いた
「王子様が、私を迎えに来てくれますように…」
一瞬、マントに隠れた老婆の形相が鬼の様になったが、姫が一口林檎を口にした瞬間、歓喜の声をあげた。
「ハハハハハハハハハハァ♪本当に愚かだねぇ!王子がお前の所になんて来るはずがなかろうに!!!」
林檎が部屋の隅に転がった。
魔女は床にふす姫の身体を抱え上げ膝に乗せる。
「これで、お前は本当に私だけのものになった♪私だけの可愛い可愛い姫…もぅ誰にも盗られることはない!ずっとずぅっと私達一緒」
姫の髪を優しく優しく撫で、ぎゅっと強く抱きしめて、今は思いのままの動かぬ彼女を愛で、魔女は高笑いをした。
が…
直ぐにその顔に陰りがかかった
「あ い し て る…
最初のコメントを投稿しよう!