三月三十一日

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出撃までに、も一度兄の墓参りと思いしも時間なし。 お父さん、お母さん、新平何一つとして思い残す事とてありません。 唯御国の為に立派に死ねる喜びで一杯なのです。 唯一つ心配なのは、半年の間に二人の子供を失うお父さん、お母さんの事です。 苦労ばかしおかけしたお父さんお母さんに、これからはうんと親孝行をしよう……何時も兄さんと言った言葉でした。 実はこの間かえった時も、ほゞ今度の事は解って居りましたが、遂に言い出せませんでした。 だが、お父さんお母さん、新平は死んだとて魂はいつまでもいつまでも生きて居ります。
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