神無さん

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「で、今回も失敗・・・と。君はいつになったら妖と契約できるようになるんだい?」  オレの上司である神無さんが、呆れた目で見てくる。 これでも努力してるんだけどなぁ。 「いやぁ、それがターゲットが逃げちゃいましてね?仕方なかったんですって!!」 「・・・昨日の言い訳は確か《ターゲットがすばしっこくて》だっけ?昨日とどう違うのかな、杉くん」 「うっ・・・」  ちなみに、「杉」って言うのはオレの名字。 氏名は「杉良太郎」。この名前がカッコいいかは置いといて。 「ここ『社』で働いている以上、妖を従わせてないとお話にならないんだよ?君だって分かっているだろう?」 「えぇ、まぁ・・・」 「杉くんが早く立派な『妖従士』になってくれないと、私としても立場がないんだから・・・」  はぁ、とわざとらしくため息をつくと、いつものように目を細めてにっこぉと笑う。そして 「って事で、今日は連続でお仕事をしてもらうからね」 「えぇっ!?」 「んっ?文句があるのかい?契約1つできない君が」 「・・・いえ」  相変わらず心にグサグサくる事を言う人だな。 心が折れそう・・・って事はないけど、地味に傷つく。 「ならば早速行ってきてもらおうか。場所はそう遠くないから~。 仕事内容は『井戸に住み着いている妖を退治。及び契約を行う』だよ」 「了解です」  早く仕事を終わらせたかったので、早速仕事に向かうため部屋から出ていこうとすると、神無さんが  「あ、くれぐれも井戸に落ちちゃダメだよ?」  バカにしているのか、本気で心配してくれているのかよく分からない事を言ってきた。 「分かってますよ、それ位」  オレは前者と受け取って、口を尖らせながら部屋を出て行った。  そう、この時神無さんの言葉の真意に気づいていない時点でオレの人生の歯車は狂っていたんだ。
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