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孤児院まではもう少しでつくが、レントの体力はもうすでに残り少なくなっていた。
体力を回復させるために、少し休憩しなければならない。
それに、孤児院に帰る前に絶対にやらなければならないことがある。
「この卵、どっかに隠さなきゃな」
レントは寝っ転がったままひび割れた卵を見つめた。
この世界では、竜の卵を見た者はレントの知っている限りではいない。
竜は巣で卵が孵るまでつきっきりで世話をするので、見ることが出来ないのだ。
そんな状態にある中、この卵を孤児院に持って行ったらどうなるかは、目に見えていた。
必ずどこかの研究機関に持って行かれて、そこで実験の道具にされるだろう。
(そんなことは、絶対にさせない。この卵は、俺が育てるんだ)
レントの頭の中では、この卵はレントの物となっていた。
そして、レントは孵ってきた竜をパートナーにすると、もう決めていたのだ。
数十分経った。
レントは起きあがり、卵を抱えた。
「さて、行きますか」
休んでいる間に、隠す場所は決めていた。
そこは、レントが昔見つけて、それ以来隠れ家にしているところだった。
人気がないところで、外から見ても全く分からないので、何か嫌なことがあった時にそこへ行っては一人で泣いたり笑ったりしていたのだ。
勿論、今までに見つかったことはない。
「あそこなら、誰にもばれないよな」
そんなことをつぶやいて、レントは歩き出した。
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