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西暦2011年10月。
国防軍本部にある実験施設では…
新たに開発された特殊強化服『ディーンシステム』をまとった隊員が、その起動実験を行っていた。
地上に備え付けられた人型の的を相手に実験を行う隊員。
まず、右腰部に装備されている短剣を抜き構えた。
「スラッシュダガー…レディ!」
隊員は、スラッシュダガーの鋭い刃で的を次々と切り裂いていき、足で地面を擦るようにブレーキをかけた後ターンした。
「ディー・マシンキヤノン…レディ!」
スラッシュダガーを右腰部に納めた隊員が右腕を振りおろすと、右腕の装甲から一門の砲身が出現した。
隊員は狙いを定めて新たに地面からせり出しだしてきた的を撃ち抜いていった。
一通りの起動実験を終えた隊員は、ディーンシステムの性能を確認するようにつぶやいた。
「ふぅ…
ディーヴァより扱いやすく…をコンセプトに開発か。
ま、確かに格段に扱いやすいがな。」
腹部のバックルのスイッチを押し、ディーンシステムの装甲を解除する隊員。
その素顔は一年前、特殊部隊『ブライトナイツ』の一員として、エヴォル人の野望を打ち砕いた『英雄』、榊晃平であった。
かつて、ブライトナイツに所属していた者や共に戦った他の部隊の仲間たちが人事異動などで散り散りになる中、晃平は国防軍の本部に残り、今後国防軍の主力兵器となるであろう数々の新兵器の起動実験を行うテスト要員としての役割を担っていた。
「榊クン、お疲れ様。」
汗まみれの晃平にタオルを投げ渡す女性…
メガネをかけ、長い髪をヘアバンドで止めた端正な顔つきで、晃平より少し年上であるようだ。
「若槻二尉、今は勤務中です。
『クン』呼ばわりはやめてください…
あの…いや、やめてくれないか。」
晃平は汗を拭いながら、少し遠慮がちに返した。
「はいはい、榊一尉様。」
女性は若槻アリサ。
国防軍の会計を務めていたが、一年前、晃平の所属する開発チームにオペレーターとして配属されたのだ。
階級は二尉だが、晃平の一期先輩にあたり入隊時は航空部隊に所属、パイロットとして活躍していた。
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