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「…吏優、何か出たら、千里のこと頼むよ。」 「うん、大丈夫。」 暁に吏優が静かにうなづく。 暁は由利に向き直った。 「…見せてもらうぜ、お前の姿を。」 そうつぶやいて暁は水盆の中江そっと聖杯を傾けた。 ・・・ちゃぽん、 ゆれが収まり、やがて映し出される由利の顔 が、次の瞬間・・・・ 「……!!!」 「…なにこれ…!!!」 赤く染まる聖水。 次の瞬間、聖火が消え、教会は闇に包まれた。 「…ちーちゃん!」 吏優はすぐさま千里の体をかばうように抱き寄せる。 「二人とも、マリアのそばに!」 由利から目を離さないまま、暁は叫んだ。 ーーーーいる。どこに? 水盆を見てもただ赤く染まっただけで何かの姿を映し出すことはなかった。 「…ちっ…!」 ふと、今まで微動だにしなかった由利の体がぐらりと大きく揺れた。 …きた!? 「…イヒ…イヒヒヒヒヒヒ…」 口元をゆがめて笑う由利。 暁はそっと、ウエストポーチに手をかけた。 『やめときなよ。』 「……!!」 『あんたには無理だよ?このこは救えない。』 「・・・・お前、誰だ。なんで篠崎の体に入ってるんだ…」 『―――あ、はははははは…!』 闇に包まれた教会に響く由利の高笑い。 『なぜ!?ふふふ・・・なぜだか知りたい?』 おちょくるようにしゃべる、何者か。 暁は、軽く舌打ちをして相手を見据えた。 相手がわからない わからないんじゃ… 『知ってるよ?攻撃できないんだよね?』 「…な、」 『俺の正体がわからないんじゃ、持ち主傷つけるだけだもんなぁ!!あははは!』 カクンと由利は首を曲げて言った。 『知ってる。お前のことははるか昔から…。ねぇ?暁の太陽(アカツキノヒカリ)?俺とこいつは利害が一致したのさ。』 ギラリと由利が果物ナイフを取り出して、ぬるりと舌先でそれをなめる。 「…あかつきの、ひかり…?」 『ふふ…ふふふふ…』 いやらしい笑みを浮かべながら、由利は暁にナイフを突きつけた。
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