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「ラビ、そこにいるんでしょう?」
「はは、気配は消したつもりだったんだけどなぁ」
「ええ、消えてましたよ。最初は気がつかなかったです。でも、立ち聞きなんて趣味が悪いですよ?」
「それが、ブックマンだからね」ラビは両手を組んで頭の後ろにやるとにやりと笑った。
「ユウ怒ってたぞ」
「神田はいつも怒ってますよ」
「そりゃそうだ」
ははは、と笑う声がここではとても響いて聞こえた。
「なぁ、アレン」
「ん?なんですか?」
「お前は……辛くないのさ?」
「……戦争なんですから、僕だけが辛いわけではないでしょう?どうしたんですか、急に」
「そうだな、うん。アレンはいっつも笑顔だからさ」
僕は、逃げているのだろうか。
ラビが本当に聞きたかったことは別にある。知っててはぐらかす僕はやっぱり卑怯だ。
「お腹すきません?僕はすきました。さ、食堂行きましょう!」
「アレン……さっき食べたばっかりじゃないさ」
「そうですか?僕はまだまだ食べれますよ!」
「全く、アレンの胃袋はどうなってるんさ」
そういって、呆れたように笑うけどラビは文句も言わずに付き合ってくれた。
神田の責めるような瞳も、ラビの質問も、僕を困らせる要因の一つであることに変わりはない。だけど、それ以上に僕の態度が彼らを傷つけているのを僕はわかっている。
それでも、本当のことなど言えるはずもないのだ。
こんな――呪われた僕が幸せになんてなってはいけない。
マナ、僕はマナが好きだよ。
例えマナが僕の中の誰かを見ていたとしても。
僕はこの呪いを忘れないから。
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