君のスイッチ

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 それからだ、僕は彼女に怒鳴られようとも構うもんか、と彼女の身の回りの世話し始めた。勝手に部屋に遊びに行っては、ゴミの分別、散乱した本の整理整頓、掃除まで、勝手にだ。平気で食事を抜く彼女に、保存のきく差し入れまでした。  「怒鳴るのが君の正義なら、勝手に身の回りの世話をするのが僕の正義だ」と僕は彼女に言ったことが有る。なるほど、と納得した彼女の顔は今でも忘れられない。  そうやって、彼女は好き勝手にジャーナリズムを追い掛け、僕は彼女の世話をする、といった不思議な関係が出来上がったのだ。友人、と言えなくもないだろう。彼女も何処か僕には気を許しているようだったし、頼っている部分も有ったと思う。  
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