君のスイッチ

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 一年ぶりに連絡が有ったかと思えば、彼女は大きく変化をしていたのだから、ちぐはぐな心地は否めない。大学時代によく呑んだこの居酒屋で待ち合わせをしたのだが、僕は彼女に一目で気付けなかったのだ。  「それで、君はそのボタンを押したのか?」  「ん?」 と僕の質問の意味を汲み取れず、彼女は訝しげに僕を見る。どうやら相当酔いが回っているらしかった。  「ボタンだよ、スイッチ、君が見えているスイッチを、君は押したのかと訊いている」  「押せるものなら押してるわよ。それはね、実に魅力的なスイッチなの。押してよ、僕を押して、って具合に囁くんだから。だけど私には、そのスイッチを押した後の未来までは見えない。スイッチを“ON”にすれば何かが変わるのは間違いないのだけれど、何が変化するのかは判らない」  
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