君のスイッチ

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 「あるいは僕のアパートの部屋に浮かび上がる、天井のシミのように」  「馬鹿、アナタの部屋のシミなんて知らないわよ。冗談じゃないんだからっ」  冗談じゃないと言われても、僕にはスイッチなんか見えないし、人生の何かしらを“ON”にする予定もない。冗談の一つも言いたくなる。だが、ここで彼女の言葉を否定すれば、手痛い目をみるの自分だという事を僕は知っている。  「……悪かったよ、すまない。だけどね、本当に残念なのだけれど、僕にはスイッチなんて見えないんだ。しかし、君の言葉を理解しようと努力はしている。それは判るよね?」  マーヤは頷く。その素直に姿に僕は昔を思い出した。大学時分はこうやって彼女を諭したものだ。僕が真摯に自分の心境を述べる時に限り、マーヤは素直に頷くのだ。  
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