要の部屋

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「……誰?」 おもむろにインターホンの受話器を取る。 ――第一声に『誰?』って…。 芽依は誰だか判らぬ来訪者に、 哀れみの涙を浮かべた。 「…やぁ、大樹。何の用?」 ――あぁ、やっぱりこの役目は大樹くんなのね…? 思わず芽依は目尻を拭う。 「えっ?俺は呼んでないよ? 一生、そこで待ってれば?」 魔王が黒く笑む…。 「もぅっ!要さんっ!!」 芽依は要の横へ行き、すかさず受話器を取り上げた。 「…もしもし?大樹くん? ごめん、今開けるからね」 「芽依ちゃん、電話じゃないんだから『もしもし』って…」 芽依は要を押し退け、ロックを解除する。 「んもぉ!大樹くん、泣いてたじゃないですかぁ!」 「知らないよ」 クスクス笑って彼女の腰を抱き寄せ、首筋に唇をあてた。 ピ―ンポ―ン 2人の空間に軽やかな音が響く。 行かせまいとする要の腕を解き、玄関へと急いだ。 「はぁ~い」 黒い扉を開くと、 半べそをかいた大樹と苦笑いを浮かべた美奈子が立っていた。 「…芽依ちゃん、ありがとぅ」 「お招き、ありがとうございます(笑)」 「ごめんねぇ、魔王が意地悪して…」 スリッパを用意して部屋へと促す。 「…誰が魔王?」 「ひぁっ!?」 ――魔王、降臨。  
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