第四蹴/激闘! 暗黒世界を行く者

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「うおお!」 『おおきに、もう一本やで』 「おっ! 来た、もっと押せ!」 「うおおお!」  結果、運よく三本のコーヒーを入手した二人は、守衛室に戻りパイプ椅子に腰掛けた。  意気揚々というほどでは無かったが。  なにせ、全て同じブラックコーヒーのロングサイズだったのだから。  しかしヒーローのテンションは、未だ覚めやらない。  一人、彼は狭い部屋で盛り上がる。 「これはブラック・ムトウが苦手な俺に、天が与えた試練だというのか! フフ、いいだろう。修業の末に新必殺技を体得するという展開は、ヒーローには必須イベントだ。欲を言うなら、偉大なる師匠に稽古をつけてもらいたい所なんだが……まあいい。この試練、受けて立つぜ!」 「ほどほどにな」  先輩としての忠告をした後、大地の顔が少し意地の悪い顔に変わった。 「お前、知ってるか? 最近守衛仲間の間で噂になってるんだけどよ。夜中の二時ジャスト、人の気配も無いのに淡く光る人影が──」 「怪談……いや、怪談に見せ掛けた悪の組織の暗躍の話ですね。聞かせてください、俺が暴いて正義の鉄槌を」 「あちこちのビルで目撃されていてだな。そいつはただじっとこちらを見つめてるだけなんだが、その視線がとても羨ましそうでな──まるで、俺達が生きている事自体が羨ましい、とでも言いたげで」 「……ゴクリ」 「ほら、ちょうどあんな感じだ。お前のすぐ後ろ」 「ッッッッッ!!?」  椅子をひっくり返して立ち上がるヒーロー。  再びファイティングポーズを取って振り返るが、当然そこに人影などありはしない。  代わりに、愉快そうな笑い声が守衛室に木霊した。  当然、大地の爆笑だ。  この後、しばらくの間涼は暗闇が苦手になってしまうのだが、彼ならばすぐに克服してしまう事だろう。  何故なら、彼はどんな困難にもくじけない熱血ヒーローなのだから。
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