陽のあたる坂道

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にやにやと笑う紫宮は席に着いた僕の前に立ち、近くの椅子を引っ張り出してそこに腰を下ろした。 いかにもスポーツマンといった風貌の友人を前にしても、僕はなお無言。 だが紫宮の方はどうやら僕の怪我を確認しているようで、まずは右頬に張られたガーゼ、左腕の包帯、と言った具合にまじまじと見ている。 あらかた見終わったのだろう、紫宮は僕の目を見て、 「喧嘩か? 事故って風には見えねぇな」 笑みを崩さないまま聞いてきた。 「わからないよ? 階段から転げ落ちたなんて間抜けな理由かも知れない」 「事故ってんなら大抵、右か左か、怪我は片側に偏るもんだ。 左腕に添え木、右頬にもガーゼ張るなんてのはよほど面白い落ち方しなきゃならないだろ。 それにズボンの上からじゃよく分からないけど歩き方見るに足はあまり痛めてない」 よく見てるもんだ。 それに案外、心配をかけているのかも知れない。 「ただ都築が喧嘩、なんてのはそれはそれで信じらんねぇけどな。 絡まれたら謝り倒して金渡して、穏便に済ませるはずだ」 「嫌な信用があるみたいだな、僕には」 流石にそこまでへたれてない。 と言い切れないのは事実だけど。 「いやそこは謝りすぎて癇に障ったとかでしょー」 いつの間にか隣に立っていた少女が会話に加わった。 茶色混じりの長い髪を後ろの高い位置でまとめ、活発そうな瞳には好奇の色をたたえた薄い胸。 こちらもクラスメイト、荻原希咲。
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