陽のあたる坂道

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僕は夏が嫌いだ。 それは僕が一日の中でほんの少し気に病むことがあったくらいでうじうじと悩むような人間だから。 開放的、なんて言われるその季節、僕は自分に居場所がないような気になってしまう。 居場所がなくて、僕はこんな人間で良いのか、とまた下らないことで頭を抱える。 僕は自身に変わることを強要される。 なんともまぁ、陰気なものだ。 今なら紫宮や荻原が言っていたことにも頷ける。 一度殴られた方が良いな、昨日のとはまた別に。 「もし、そこの少年」 ふと、後ろから声がした。 女性の声だ。 僕に声をかけたのだろうか? しかし知り合いならば名前を呼ぶだろう。 こういう時には無視するに限る。 知らない人には関わるべきじゃない。 昨日も失敗したばかりじゃないか。 振り向かず、そのまま歩き続けようとしたとき再び、 「聞こえなかったのか? そこの包帯の少年、ちょっと良いかな?」 確実に後ろの人物の狙いは僕だった。 怖い。 きっと振り向いたら愛想の良い女の人が立っていて、どこかの喫茶店に連れ込もうとするのだ。
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