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いつの頃からだろう。
そんな考えが僕の頭にこびりついたのは。
午後十一時過ぎ。
夜の帳は降りていても、駅前に連なる居酒屋などはそれをはじき返すように光り輝いている。
けれど僕の立つここにはそんなことは関係なかった。
ここは人通りの多い道から外れた路地裏。
人目に付かず、悪さを働くにはうってつけの場所だ。
だが、僕が何かするわけではない。
僕は自分で言うのも何だがとても良い子だ。
悪さを働くのはこの人達。
僕の目の前に立っている、あからさまにヤンキーしていらっしゃる方々。
計三名。
つまり僕は彼らの悪さの餌食になる生贄くんなのだ。
ヤンキーさん達の顔に浮かぶのはどれも下卑た笑み。
彼らは自分たちがこの状況の支配者だと言わんばかりだ。
確かに僕みたいなもやしっ子一人を逃げ場のない路地裏で囲んでいる訳だし、その考えは間違っていない。
間違えているのは僕の方だ。
喧嘩なんざ親兄弟としかしたことのない僕がちょっとした気の迷いで絡まれている女の子を助けちゃった、そんな間違い。
逃げる手立てのないこの状況。
どうしよう。
「あれあれぇ?
どうしちゃたんですかぁ?
格好良く女の子助けたわりにおとなしいじゃないか」
僕を囲むヤンキー、その正面にいる金髪が声を上げる。
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