境界線の向こう側

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でも。 でもたったそれっぽっちのことなのだ。 痛いけど、それだけ。 怖いけど、それだけ。 足は動くし手も動く、頭も回る。 なんだ、なんてこと、無いじゃないか。 だから。 だから僕は立ち上がると前を見据えて駆け出した。 きっとこの時が、僕の物語のプロローグ。 この時ヤンキーどもに立ち向かったからいけなかったのだ。 いや、正確に言うのなら、僕がこの時に自分の中の非常識を常識としてしまったことか。 それ故に僕は主人公になり、ヒーローであることが義務付けられ、英雄としてしか生きられなくなった。 ――さぁ、今夜も英雄譚を始めよう。
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