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午前七時五十二分の僕は、暑くて痛くて泣きそうだった。
ついでに死にそうだった。
梅雨が明けたばかりの七月。
節々が痛む身体を引きずるように僕は通学路を歩いていた。
慣れないことはするものじゃない。
昨日の夜中にコンビニに行ったことがそもそもの間違いだったのか。
絡まれている女の子を助けたのがいけなかったのか。
やっぱり、ヤンキー三人相手取って喧嘩したのが悪いのだろう。
そのおかげであちこちに生傷が出来たし、顔には大きなガーゼが張られているし、腕には添え木に包帯だ。
結局はパトロール中の警官に助けられたわけだが、それも聴取やらなにやらと面倒なことこの上なかった。
「おはようございます」
不意に横合いから声をかけられて右を向くと、隣にはクラスメイトの神崎優花が歩いていた。
声をかけた割にこちらではなく正面を向いていて、ともすればこれは他の人に宛てての挨拶ではないかと思うほどに素っ気ない。
もしこれが僕宛でなかったとしたらと思うと、ここで何気なく「おはよう」と返すことは危険だ。
この通学路は僕以外の人がほとんど通らないわけだが、そういった道を選んで通っているわけだが、彼女はもしかしたら道端の石ころ相手に話しかけたのかも知れない。
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