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それから、ある程度傷がふさがったらすぐにケイトのお父さんがおんぶをして家に向かって走り出した。
その後をケイトのお母さんと私のお父さんがぴったりと付き添うように走って行きました。
私はお母さんの横で立ち尽くすよう、そんな光景をただ見ていることしかできませんでした。
呆然と4人の後ろ姿を見つめる私に、お母さんがゆっくりと足を家へと向けて、歩き出しながら、優しい声で尋ねてきました。
「アリス……何があったのかしら?」
私は同時に差し出された、お母さんの手をとりながら、お母さんの表情を伺うと真剣な表情をしていました。
「魔族に襲われました……
それでケイトが庇ってくれて……」
私はポツポツとあの時の状況を口にしました。
お母さんは私の話をただただ頷いて聞いてくれました。
そんな風にお母さんに話していると、自然と涙が溢れてきました。
私を庇って傷ついてしまったケイト。
私は何もすることができなくて……
小さな私でも分かりました。悔しくてケイトに申し訳なくて。
そう思いながら、話し終えると、お母さんは優しい笑みを浮かべながら頭を優しく撫でてくれました。
「ケイト君はあなたをちゃんと守ってくれたようね……」
最後の方涙声になりながら言うお母さん。
「うん……」
私はそう答えることしかできませんでした。
「彼はあなたの立派な騎士様ね……」
そう言って微笑むお母さんの目からは涙が零れていました。
「うん…うん…」
私はその言葉に泣きながら頷くことしかできませんでした。
騎士様の意味なんて、この時はあんまり理解なんてしていなかったけれど、ケイトみたいな人を指すんだと心の中で思いながら、自然と溢れ出てくる涙を洋服の袖で拭っていました。
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