~あの事件の後~

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そんな頃合を見計らってケイトのお父さんが切り出すようにゆっくりと口を開きました。 「ケイトはもう魔法が使えないそうだ……」  その声は涙声でした。 「それは…どういうことですか?」  私のお母さんが尋ねると今度はお父さんが、少しためらいがちに口を開いた。 「背中を切られた傷は深くなかったから、魔法を使えなくなる原因にはならなかったそうだ。 魔法を使えなくなった、いや使えなくしたのは…… 3箇所の刺し傷らしい」 「ま…まさか…」  突然お母さんが目を見開きました。 「そのまさかなのです。 ケイト魔力回路と源をやられてしまいました…… お医者様に治せないのかと聞いたのですが、この世界の一番の医療魔法でも無理だそうです……」  ケイトの眠るベッドの白いシーツをグッと握り締めながら言ったケイトのお母さん。 そんなケイトのお母さんの様子を見て私はお母さんに尋ねた。 「私を庇ったから? 私を庇ったからケイトが魔法を使えなくなっちゃったの?」    今でもこの時の事は覚えています。 私のせいで魔法を使えなくなったの?そんな事がグルグルと私の中を巡りました。 「何があったか話してくれないかい?」  そんな私を見て言うケイトのお父さん。 私はお母さんに説明した時同じように話し出しました。 魔族に襲われた事、私を守るためにゲームと称した拷問に耐えてくれたこと。 ケイトの両親は目を瞑って何も言わず最後まで聞いていました。 「ケイトはちゃんとアリスちゃんを守ったのだね?」  ゆっくりと目を開きながらこちらを向いて確認するケイトのお父さん。 「はい……私を守ってくれました」  私は涙を流しながら頷きそう言いました。 何で私はあの時に何もできなかったのだろう? 私は小さいながら自分を責めていました。 「そうか、そうか……ちゃんとアリスちゃんを守ったのか」  そう言ったケイトのお父さんの目からは再び涙が零れ落ちました。 笑みを浮かべたまま、とめどなく落ちる涙を拭うこともせずに泣きながら、ケイトの頭をそっと撫でる。 「ケイト、お前は偉いぞ。 命を張ってアリスちゃんを守ったんだからな。頑張ったな……」  涙を流しながら笑顔で、未だに目を開けないケイトに言うケイトのお父さん。 その間ケイトのお母さんはただただ涙を流し続けていました。
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