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私達家族は静かにお父さんに促されるように、ケイトの居る部屋から出ました。
部屋の外にはたくさんの執事さんとメイドさんが心配そうな顔をしながら立っていました。
そんな心配そうな様子の皆を見てお父さんが口を開きました。
「大丈夫だ。生きてるぞ」
このたった二言で皆の表情が安堵した表情になりました。
お父さんはそんな安堵した表情の皆を確認すると、廊下を歩き出しました。
私とお母さんはその後ろについて歩きました。
誰もしゃべらない沈黙がしばらく続いた時、お父さんが前に足を進めたまま言いました。
「アリス、ケイト君との婚約は流れてしまうかもしれない……」
「え?」
私はその時その言葉の意味が全くわからなかりませんでした……
すると横を歩いていたお母さんが顔を伏せて、悲しそうな顔をしながら言ました。
「魔法が使えない貴族の子供は……普通捨てられるのよ」
「じゃあ、ケイト捨てられちゃうの?」
と私は恐る恐る尋ねました。
両親は黙ったまま足を前へと進めていきます。
小さかった私でもわかりました。
それは無言の肯定でした。
「私のせいで捨てられちゃうの? ねぇ…私のせいなの?」
私はお母さんに涙ながらに尋ねました。
お母さんに否定して欲しくて、私はお母さんの着る服の端を軽く引っ張りながら尋ねたけど……
「事故だから仕方ないわ……」
そう苦そうな顔をしながら言うお母さん。
私の事を考えての精一杯の言葉でした。
「私……ケイトと結婚したいよお父さん……」
お父さんはこちらを振り向く事無く言いました。
「すまない……」
その声は涙声でした。
自分の部屋の近くまで来た時に私はお父さんとお母さんと別れ、1人自分の部屋へと向いました。
自分の部屋に私は無言で入っていきます。
そしてベッドに飛び込みました。
今日の事が夢であるようにと願いながら、日が暮れるまで私は涙を流し続けました。
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